錦江湾のイルカ調査
1999年から、遠洋水産研究所 が企画し、鹿児島大学とかごしま水族館が協力して錦江湾鯨類調査が始まりました。現在もかごしま水族館では船やセスナ機を使ってイルカをさがし、錦江湾にいるイルカの種類 、頭数 、現れる場所、子供を生んでいるか、などの調査を行っています。
調査方法
船とセスナ機を使った方法
2003~2011年まで年1回、錦江湾にいるイルカの数を調べるため、セスナ機と船3隻を使い調査を行いました。
船を使った方法
1999~2002年遠水研の企画で鹿児島大学と当館の共同で調査を行いました。
2012年から現在まで船3隻を使い、ミナミハンドウイルカの個体識別や赤ちゃんイルカの確認、ハセイルカの移動などを目的に年間3~4回調査を行っています。また、2015年はこの湾全体の調査に加えて、船1隻を用いたミナミハンドウウイルカの調査を月に1度行っています。
これまでの調査結果
錦江湾のイルカの種類
これまでの調査で、3種類のイルカを確認しています。
ミナミハンドウイルカ
英名:Indo-Pacific bottlenose dolphin
<特徴>
錦江湾でもっともよくみられる種類のイルカです。当館でも飼育しているハンドウイルカにとてもよく似ていますが、ハンドウイルカよりも小柄で、くちばしが長いことや大人になるとおなか側に黒い斑点が出てくることで区別することができます。これまでミナミハンドウイルカはハンドウイルカと同じ種類とされていましたが、様々な研究から、別の種類とする考え方が一般的になりました。
ハセイルカ
英名:Long-beaked common dolphin
<特徴>
くちばしが長く、体の横に美しいラインが入っているのが特徴です。錦江湾でも多い時には200~300頭ぐらいの群れが見られます。このハセイルカはマイルカDelphinus delphisによく似ていますが英名に“Long-beaked”と“Short- beaked”とつくように、ハセイルカはクチバシ(吻(ふん))が長いのに対し、マイルカはクチバシが短い1ことで見分けることができます。ハセイルカはマイルカに比べ、より温かい海域を好むと言われています2。
古くから日本でもハセイルカの存在は知られていたようで、シーボルトがヨーロッパに送った報告の中にハセイルカとよく似たイルカが描かれています。
ハンドウイルカ
英名:bottlenose dolphin
<特徴>
全国の水族館などで最もよくみられるイルカで、錦江湾内では南の湾の入り口辺りで時々見ることができます。ミナミハンドウイルカにとてもよく似ていますが、大柄でくちばしが太短いのが特徴です。これまでの調査でハンドウイルカを発見できたのは2回だけで、錦江湾ではミナミハンドウイルカやハセイルカに比べると発見例の少ない種類です。
<錦江湾での生息域>
ミナミハンドウイルカは、湾の奥のほうを中心に岸の近くを泳いでいることが多いイルカです。そのため、国道10号や桜島など船に乗らずに岸沿いから観察することもできます。また、錦江湾では湾の中央部でよく見られ、離島に向かう高速船やフェリーなどからの発見が多いです。時々、湾の奥でも観察されることがあります。ハンドウイルカはこれまで、湾の入り口あたりでの観察しかありません。
イルカの発見頭数
平成11(1999)年から平成13(2001)年にかけて行ったミナミハンドウイルカの調査では、2頭~50頭程度の群れが見られ、20~30頭程度の群が一番多く確認されていて、群れの頭数の平均は約30頭でした。その後の調査においても60頭を超える群れは発見されていないので、錦江湾には60頭ほどのミナミハンドウイルカがいると考えられています。
セスナ機と船3隻を用いた調査
ハセイルカは、発見頭数にはかなりばらつきがあり、平成16(2004)年から平成23(2011)年にかけて行ったセスナ機と船を使った調査では、多いときで520頭、少ない時はまったく発見できませんでした。もしかするとハセイルカは錦江湾から出て外洋に行ったり、反対に外洋から湾内に入ってきたりしているのかもしれませんが、今のところ実態はよくわかっていません。2004~2011年のセスナ機と船で行った調査で見つかったイルカの頭数は、すべての種類をあわせると50~559頭、平均で約237頭でした。数の増減はありますが、このように錦江湾にはたくさんのイルカがいることがわかります。
調査年月日 | ミナミハンドウイルカ | ハセイルカ | ハンドウイルカ | 種不明イルカ | 全体 |
2004年2月11日 | 1群35頭 | 7群520頭 | 1群4頭 | 9群559頭 | |
2005年1月29日 | 2群48頭 | 2群220頭 | 4群268頭 | ||
2005年11月21日 | 2群38頭 | 2群170頭 | 4群208頭 | ||
2006年12月1日 | 1群5頭 | 1群150頭 | 2群155頭 | ||
2008年3月6日 | 3郡45頭 | 3群280頭 | 6群324頭 | ||
2009年3月11日 | 2群12頭 | 2群70頭 | 1群100頭 | 5群182頭 | |
2010年3月5日 | 3郡320頭 | 3郡320頭 | |||
2010年9月22日 | 2群40頭 | 1群30頭 | 3郡70頭 | ||
2011年9月29日 | 2群50頭 | 2群50頭 |
船3隻を用いた調査
以下は2012年から行っている、錦江湾を湾口・湾央・湾奥の3区に分け3隻の船でおこなっている調査の結果です。この調査ではミナミハンドウイルカが1~40頭の群れで(平均16頭)ハセイルカは15~150頭の群れで(平均50.8頭)発見されています。また、ハンドウイルカも1度だけ発見されています。セスナ機を用いていた時の調査よりもイルカの発見頭数が少なくなっているのは、セスナ機による上空からの観察がなくなっていることが影響していると考えられます。このことから錦江湾内のイルカの数が減っているわけではないと考えています。
調査年月日 | ミナミハンドウイルカ | ハセイルカ | ハンドウイルカ | 種不明イルカ | 全体 |
2012年8月10日 | 2群21頭 | 2群21頭 | |||
2012年11月16日 | 3群36頭 | 1群20頭 | 4群56頭 | ||
2013年2月14日 | 2群45頭 | 1群40頭 | 4群85頭 | ||
2013年5月30日 | 1群25頭 | 2群30頭 | 3群55頭 | ||
2013年8月27日 | 1群10頭 | 1群10頭 | |||
2013年11月5日(参) | 1群7頭 | 1群150頭 | 2群157頭 | ||
2014年1月24日 | 1群25頭 | 1群25頭 | |||
2014年5月13日 | 2群60頭 | 2群85頭 | 4群145頭 | ||
2014年10月7日 | 1群40頭 | 1群40頭 | |||
2015年2月3日 | 1群2頭 | 2群135頭 | 3群137頭 | ||
2015年7月7日 | 1群40頭 | 1群40頭 | |||
2016年1月12日 | 2群50頭 | 2群50頭 |