「錦江湾(きんこうわん)」は南北約80km、東西約20km、最大水深237mの細長く入り込んだ半閉鎖的(はんへいさてき)な内湾(ないわん)です。錦江湾では干潟(ひがた)、砂浜海岸、サンゴ群集(ぐんしゅう)、藻場(もば)、桜島周辺の溶岩帯域、海底から火山性ガスが噴出(ふんしゅつ)する「たぎり」、深海域など様々な海洋環境が存在していることに加えて、黒潮(くろしお)の影響も受けることから、多種多様(たしゅたよう)な生きものが生息し、特異的(とくいてき)な海洋生物相(かいようせいぶつそう)が形成されています。
錦江湾には小型鯨類(げいるい)のミナミハンドウイルカが定住し、キビナゴやマダイといった多様な魚たち、クラゲ、サンゴ、ウミウシ、イカ、エビ、カニ、ナマコなど様々な無脊椎(むせきつい)動物たちも数多く暮らしており、海中では海藻が繁茂(はんも)しています。このように錦江湾では多様な生きものから成る豊かな生態系が構築(こうちく)されています。また、錦江湾の沿岸部は市街地が広がり埋め立てや護岸化(ごがんか)が進んでいる地域もあるものの、各所に自然の海岸線も多く残されているため、多くの生物の繁殖・生育の場としても機能しています。特に湾奥(わんおう)の干潟にはクロツラヘラサギなどの渡り鳥が飛来し、重要な餌場や休息場所となっています。また、湾央部では毎年6~7月ごろアカウミガメの産卵が確認されています。
錦江湾には主に温帯性の海洋生物が生息していますが、暖かい海流の黒潮によって熱帯・亜熱帯域の生きものたちもやってきます。そして、水深100mほどの海底の「たぎり」では特殊な環境に生息する生きものによる独特な生態系がみられます。しかし、錦江湾に生息している生きものについてはまだ謎も多く残されています。ここ数十年の間にも環形(かんけい)動物のサツマハオリムシ、甲殻類(こうかくるい)のタギリカクレエビ、軟体類(なんたいるい)のタギリキヌタレガイ、魚類のモモイロカグヤハゼやパンダゲンロクダイなど錦江湾の深場に生息する生きものが新種として記載(きさい)されています。そのため、錦江湾にはいったい何種の生きものがいるのか、という質問に対しては、現在のところ正確な回答を出すことはできません。魚類の場合、約1000種が錦江湾に出現するのではと考えられていますが、その全容や真の種多様性(しゅたようせい)は未解明です。今後も調査が進むことによって錦江湾の生態系はより明らかにされていくのではないでしょうか。
本サイト内の「錦江湾の生きものたち」ではかごしま水族館が確認した錦江湾に暮らす生きものを紹介しています。身近な海である錦江湾の生物多様性を感じていただけますと幸いです。


