サツマハオリムシ
サツマハオリムシはゴカイのなかまで、1993年2月に、錦江湾の水深82mで発見されました。
自ら作った棲管(せいかん)とよばれる管の中に体をおさめ、先端からは赤いえらだけを出しています。口や胃はありませんが、体内に共生している細菌が、取り込んだ硫化水素イオンを栄養分に変えて分け与えてくれるため、えさを食べなくても生きていくことができます。このよう生物は化学合成共生生物といわれています。
錦江湾のサツマハオリムシは水深82~110m付近の泥地に群生し、場所によっては巨大なコロニーを作ってくらしています。錦江湾のサツマハオリムシは海底下深くに蓄積したメタンに由来する硫化水素イオンを利用して生きています。錦江湾を形作ったはるか昔の火山活動によって発生し蓄積されたメタンが、たぎりと呼ばれる海底火山から噴き出す火山ガスとともに、サツマハオリムシがくらす場所まで引き上げられてくるためです。そのため、サツマハオリムシはたぎり周辺にのみ生息しています。
このような錦江湾の特殊な環境が、ハオリムシのなかまとしては世界で最も浅い場所にあるサツマハオリムシの群生地を作り出しています。
水槽では、共生する細菌に硫化水素イオンを与えるため、硫化ナトリウムの水溶液を少しずつ時間を決めて滴下(てきか)しています。